投稿日:2018年7月5日(木)
風が強く自転車を漕ぐのも大変です…洗濯物など飛ばされないようにご注意下さい。権禰宜の佐藤です。
さて、神社界唯一の広報誌である『神社新報』平成29年12月11日号掲載のコラム「神宮だより」をご紹介致します。
「【神宮だより~吉川英治と「心のふるさと」】
およそ二千年前、垂仁天皇の御代から五十鈴川のほとりに鎮座する皇大神宮は皇室の御祖先であり、人々から総氏神として崇められる天照大御神をお祀りしてゐます。宇治橋を渡り、玉砂利を敷き詰めた長い参道を進むと昔と変はらない日本の原風景が広がることから、神宮は「日本人の心のふるさと」とも称されます。
このフレーズは、小説『宮本武蔵』の作者として有名な文豪・吉川英治が神宮を訪れ
ここは心のふるさとか そぞろ詣れば旅ごころ うたた童にかへるかな
と詠はれたことによります。吉川氏は昭和25年12月10日、『新平家物語』の執筆取材に合はせての参拝でしたが、当時の日本はまだ占領下で、神宮に参拝すると進駐軍に沖縄に送られるとのデマが蔓延し、広大な神宮の神域には人影もまばらであったやうです。
敗戦の衝撃から一時筆を執ることができなくなってしまった吉川氏は、神宮においてまるで童心に帰ったかのやうな安らぎを味はったのではないでせうか。
また、『宮本武蔵』には神宮の子良館(こらかん)や五十鈴川が登場し、足の化膿を治すために五十鈴川を遡り鷲嶺に行く場面もあることから、当時案内を務めた杉谷房雄禰宜と2時間に亙り懇談をされたことが現在でも伝へられてゐます。
それから67年が経ちましたが、「心のふるさと」のフレーズは色あせることなく、現在では国内はもとより世界中から年間800万人を超える参拝者が伊勢を訪れてゐます。心のふるさとにおいて魂がゆさぶられるのは日本人ばかりではないと信じてゐます。」