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【神社新報コラム】杜に想ふ~御新造さん~

投稿日:2019年3月30日(土)


今日3月30日は、「国立競技場落成記念日」。昭和33(1958)年のこの日、神宮外苑に国立霞ヶ丘陸上競技場が完成した。敷地面積は22000坪で約58000人の収容能力を持ち、昭和39(1964)年には東京オリンピックの開閉会式の会場になった…との事です。私が生まれてもいない昔のことですが、その国立競技場も今は解体され、新たな国立競技場の整備が急ピッチで進められています。東京オリンピックまであと1年と少し。ご関係の方々のご苦労はいかばかりかと存じますが、無事に素晴らしいオリンピックが開催されます事を祈念申し上げます…権禰宜の遠藤です。

さて、神社会唯一の業界紙であります『神社新報』平成31年3月18日号掲載のコラム「杜に想ふ~御新造さん~」をご紹介致します。

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神社新報 杜に想ふ

【杜に想ふ~御新造さん~】

「今年の冬は近年稀にみる暖冬で、雪除けが労苦となるやうなひどい降雪のなかったことを幸ひと思ひつつ、ふとその昔、近隣の宮司さんの奥さんが「三月の雪と隣りの親父」と言ってゐたととを思ひ出した。これまで聴いたことがなかった言葉に、どういった意味かと訊ねたところ、「三月に降る雪の量は大したことがなく、またすぐ陽光で融けてしまふ。そして、隣家の主人がどんなに腹を立てて怒ってゐたとしても、所詮は他家のことであり、隣家の嫁である自分に危害を加へてくることはまづない。つまり、どちらも恐れるに足らないといふこと」と教へていただいた。先人からの名言と一人得心し、咲き初めた紅梅を眺めながら除雪道具をやうやく倉庫へと片付けた。

さて、先日、心待ちにしてゐた嬉しいことがあった。十数年来とお世話になってゐる神社の宮司さんの御子息の結婚披露宴に僭越ながら小生もお招きをいただいた。思ひ返せば新郎がまだか細い中学生の時より折々の祭事にお邪魔をし、自称「爺や」の心持ちでその成長を拝見することが何よりの楽しみであった。

宮司さんは陸上競技の元オリンピック選手で、常日頃より「世界一足の速い神主」と笑顔で自己紹介をされる強健な身体つき。その奥様は三十数年前に見染められ、都会地より嫁がれた方で、「御新造さん」と呼ばれる。当地では神職家の若奥さんの呼称であり、これはもはや歌舞伎の舞台上の台詞でしか用ゐられない言葉なのではなからうかと、『古語辞典』を紐解いてさへみた。氏子さんから親しみをとめ、何かにつけ「御新造さん」と呼ばれ、常に笑顔で気働きをされる姿は生来の気立ての良さであらう。さらには隣県の神職家から嫁がれて半世紀を超えるが、これまでは氏子さんから一様に「奥さん」と呼ばれ、このたび「大奥さん」となり、もはや尊崇の念さへ感じさせるお姑さんからの親身で微細に日々受けられた社家教育のなせる業とも言へる。

御子息の披露宴では御媒酌人より、新郎は同じ競技で父を超えることはできないとの思ひから、高校時代より空手道で身心を鍛へ、神職資格の取得後は神職と格闘技を両立すべく、奉仕先神社の宮司さんの寛大な御諒解をいただいて武者修行を積み、昨春、郷里に帰って累代奉仕神社の禰宜となったことが紹介された。また総代代表は、前置きをしながらも、平成生まれの若い二人に、新しい御代での世継ぎ誕生が待ち望まれるとの祝辞に、列席する総代さんたちから大きな拍手が贈られた。新婦も数年前に一度御挨拶しただけにも拘らず、私の顔も名前もしっかりと覚えていただけてゐたことは驚きで、「世界一強い神主」の新たな「御新造さん」誕生の喜びが増した。

父母の宮司夫妻の時に倣ひ、単衣冠の神職としての正装と五衣唐衣裳姿の若い二人の姿は、まさに桃の節供の雛飾りそのもので、春の暖かな日差しに輝く金色の子姿が実に印象的だった。」

 


白旗神社ホームページへようこそ。当社は古くから藤沢の地に鎮座する古社で、相模國一之宮寒川神社で有名な寒川比古命と歴史上のヒーロー・源義経公をお祀りしています。寒川比古命は厄除け・方位除けの神様として知られます。また武芸、芸能、学問に優れ、才気あふれる源義経公は、学業成就、社運隆昌などのご神徳があります。境内には、悠久の歴史を感じる史跡が多く、四季を感じられる緑豊かな自然もあります。
ぜひ早起きした朝やお休みの日にでも、お気軽に当社にお越しください。皆様のご参拝を心よりお待ちしております。