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【神社新報コラム】杜に想ふ~職能神~

投稿日:2020年10月11日(日)


【暦で見る九星の運勢シリーズ】九紫火星:10月(各自の九星についてはブログ末尾の表をご参照ください)「吉方…北東 周囲からおされて中心的になりそうなので、期待に応えられるようにがんばって。ただし、一人だけ目だったり独断が強いと、嫌われて孤立する恐れがあるから、気配りを忘れずに」とのことです…権禰宜の遠藤です。

さて、神社界唯一の業界紙である『神社新報』令和2年9月21日号掲載のコラム「杜に想ふ」を御紹介致します。

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杜に想ふ

【杜に想ふ~職能神~】

「困ったときの神だのみ」、といふ。コロナ禍が続くなかで、むかし疫病封じで使はれたとかいふ護符や怪奇画が表出したりもする。「運を天にまかす」、ともいった。これは、潔さをたたへることに相違ないが、無慾を強調するのではない。そこには、よき成果を願っての真摯な祈願がある。たとへば、そこに”職能神”を祀るのがよい例である。

90歳を迎へた陶芸家が、しみじみといったことである。

「これまで何万点かの器を焼いてきたが、思びどほりに焼けたものは、ほとんどない。成形は、ほぼ思ひどほりにまとめられる。釉薬も、ほぼ思ひどほりに調へられる。

ただ、焼成となると、さうはいかない。現在はガス窯で大きな狂ひはなくなったが、登り窯で焼くとなれば、火加減がむつかしい。二日も三日も、ほとんど不眠不休で炎をはかりながら焼く。それでも、焼き上がりは、火の神さんの御機嫌しだい、といふことになる」

そこでの火の神は、その土地の荒神であることが多い。産土荒神であれ三方荒神であれ、その一徳に火の守護がある。

一般には、荒神の木像や木札を、窯の焚口の上方に祀る。あるいは、近くの柱に棚を設けて祀る。神職が関与するところもあるが、それは稀で、窯元が独自に祀るところが多い。とくに、窯入れのときは、そこに神飯・神酒、それに塩を供へて丁寧に祀る。

もうひとつの顕著な”職能神”は、酒造の守護である。多くは、松尾明神が祀られてゐる。たとへば、『壱子相伝造酒口伝』(天保9年〈1838)のなかに、次のやうな一文がある。

「一、酒屋の亭主、朝夕松尾大明神へ心信之事」。そして、「千早振神もうれしくおもふらん、身もさゝ川の、清き御造神酒(みきつくり)、三べん唱へて、かしはで二ツ打て」とある。古来、酒造りは、神のなす術ともされてゐたのだ。

酒造では、仕込んだ後の管理がむつかしい。現在でこそ、空調管理や醗酵調整が進んで通年酒造が可能になってゐるが、以前は、寒仕込みにかぎられてゐた。それでも温度が高くて異常醗酵の虞があると、桶のまはりに水を撒き続けなくてはならなかった。その逆に、寒すぎると、桶に布団を巻きつけて醗酵を促さなくてはならなかった。

「酒屋殺すにゃ刃物はいらぬ、ユズの一つもあればよい」といふ俚言もあった。仕込み桶の中にさうした異物が少しでも入れば、酒は上手に仕上がらない、といったのだ。米も大事、水も大事。しかし、最後の仕込みとは、さほどにむつかしい作業だったのである。

「運を天にまかす」、さうせざるをえなかったところで、守護神を祀ることになった。それは、商売繁盛とはまた別な、自然の摂理への畏怖がなす信仰といふものであった。

私などには、”職能神”がない。が、自然に対してそのやうに謙虚でありたい、と思ふ。」

厄年表R2

 

 


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