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【神社新報コラム】杜に想ふ~雨の文化~

投稿日:2020年7月7日(火)


今日7月7日は七夕であり、二十四節季の「小暑」(しょうしょ)でもあります。これから本格的な夏を迎えるという時季になります…権禰宜の遠藤です。

さて、神社界唯一の業界紙であります『神社新報』令和2年6月29日号掲載のコラム「杜に想ふ」を御紹介致します。

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杜に想ふ

【杜に想ふ ~雨の文化~】

「雨雨ふれふれ母さんが

蛇の目でおむかへうれしいな(童謡「あめふり」)

子供のころ、誰もが慣れ親しんだ歌である。「これには、「ピッチピッチチャップチャップランランラン」といふ雨の擬音語が入る。「子連れ狼」といふ人気時代劇の主題歌にも「シトシトピッチャン」といふ擬音語が入ってゐた。

それほどまでに、私たち日本人は、雨になじんでゐるのだ。日本列島は、世界でも冠たる多雨列島である。それゆゑに、山々は緑で”あり、空き地には雑草がはえる。私たちは、(それを当然としてゐるが、外国人がなじむまでには相応の時間がかかるのである。

その顕著な例が、梅雨時の対応である。プ!ロ野球に助っ人と呼ばれる外国人選手が加入するやうになってからしばらくの間、梅雨になると退団者が相次いだ。これを、「水虫病」とかいった。さういへば、そのころは薬局の店頭で、グロテスクな患部写真付きで水虫治:療薬のポスターが貼られてゐたものだ。が、最近はとんとみかけない。雨や湿気が減ったわけでもないのに、どうしたととだらうか。

それと同様に、「雨乞ひ」行事も後退して久しい。日本は、多雨列島であるがゆゑに稲作を発達させてきたのである。それも、夏場の高温多湿。稲作には、その恩恵があった。とくに、田植時の水は、流水が利用できる地方はともかくとして、多くの地方で梅雨での降雨を期さざるをえなかったのである。

もし空梅雨であったら、雨乞ひをした。また、その後の稲の生長期にも相当量の降雨が必要であり、その雨量が不足する夏場も、雨乞ひに頼ることになった。

雨乞ひの方法はいくとほりかあるが、一般的には山頂に登り、そこで祈繕する。神職や仏僧に祈橋を託すところもあれば、その地域の長老が土地に伝はる呪文を唱へて祈稿するところもあった。

山頂には、甕が埋められてゐる例も少なくなかった。甕を池に見立てて雨水が十分に溜まるやうに、といふ願ひからに相違あるまい。

さうして雨乞ひをした山は、竜神信仰から「竜王山」と呼ばれることが多かった。現在、地図上で確かめられるだけでも、全国各地に六十カ所以上もある。

ある会で、そんな話をしたところ、農政学者の某氏が言ったことである。「治水が整備され、現在の稲作がある。治水の悪いところは、淘汰されて休耕田となる。情緒をはさむ余地はあるまい」と。それはさうだが、日本における「雨と稲作」文化を忘れてはなるまい、と強く思ったことであった。

「雨寛」(雨にくつろぐ)、「雨遊」(雨の風情を味はふ)、それに「雨気」や「時雨」や「夕立」など。大事に伝へたい意味深い言葉も多い。余談ながら、言霊ならぬ「雨霊」もある、と思ふのだが、いかがであらうか。(民俗学者、岡山・宇佐八幡神社宮司)」


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