投稿日:2017年6月19日(月)
六月は、別名「水無月(みなづき)」といいますが、古くは松風月(まつかぜづき)とも言ったそうです。こちらの方がさわやかな感じでいいですね…権禰宜の遠藤です。
さて、神社界唯一の業界紙であります『神社新報』平成29年5月1日号コラム「神宮だより」をご紹介致します。
【神宮だより~神服織機殿神社と神麻続機殿神社~】
伊勢市の隣の松阪市には皇大神宮所管社の神服織機殿神社(かんはとりはたどのじんじゃ)と神麻続機殿神社(かんをみはたどのじんじゃ)が御鎮座されてをります。地元の人々は親しみを込めて、神服織機殿神社を「下館さん」「下機殿」、神麻続機殿神社を「上館さん」「上機殿」と呼びます。両機殿神社ともに遠くからでもお宮の森とわかる美しい社叢を有してゐます。
この地方は、古くから紡織業と関係が深く、神様に奉る絹や麻を奉織する服部神部といふ人々が住んでゐたといはれ、現在も下御糸・上御糸・中麻績・機殿・服部などの紡織業に因んで名付けられたと思はれる地名があります。
神宮では毎年五月十四日に皇大神宮(内宮)と、第一別宮の荒祭宮に和妙(にぎたへ=絹)と荒妙(あらたへ=麻)の神御衣(かんみそ)を奉る神御衣祭が斎行されますが、それに先立ち両機殿神社にて神御衣がそれぞれ古式のままに奉織されます。奉織の作業が始まる前の五月一日に、御料となる御糸と奉織に携はる織子を祓ひ清め、神御衣が清く美しく織り上がるやう祈りが捧げられる神御衣奉織始祭が執りおこなはれます。
その後、神服織機殿神社では和妙が、神麻続機殿神社では荒妙が、それぞれの社殿の横に並び立つ八尋殿(やひろどの)にて、白衣に身を包んだ織子によって、心を込めて清浄に奉織されていきます。無事に織り上げられると、十三日には奉織が滞りなく終了したことに感謝申し上げる神御衣奉織鎮謝祭が厳かに斎行されます。
奉織された神御衣は、神職の副従にて内宮へ運ばれ、翌十四日正午の神御衣祭において針と糸とともに奉られます。この神御衣の奉織と神御衣祭は十月にも同様に執りおこなはれてゐます。