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【神社新報コラム】~杜に想ふ~ 下町の居酒屋

投稿日:2018年12月14日(金)


記事のことをタイピングしていて下呂温泉というワードが出てきた時、ヒッチハイクしてまわったことを懐かしく思いました。岐阜県の郷土料理の鶏チャン焼きと漬物ステーキオススメです。権禰宜の新久田です。

さて、神社界唯一の業界紙であります、『神社新報』掲載のコラム「杜に想ふ」をご紹介致します。

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【杜に想ふ】~「礼講」の席~

下呂温泉(岐阜県)に行ってきた。観光協会の総会での講演のためだが、その後、二百人以上が会した懇親会で思ふところがあった。そこには、地元の名士も多数招待されてゐた。はじめにその名士たちが壇上に上り、鏡開きがおこなはれた。そして、枡に注いだ日本酒での乾杯と相なった。

「私たちは、下呂を愛してゐます。下呂の酒で乾杯は当然でせう」。私の隣で名士の某氏がさういった。「うまい、まづいは別もので」と誰かが小声で茶々をいれた。和やかに乾杯がおこなはれた。

このごろ、かうして日本酒で乾杯する会が増えてきてゐる。県や市町での地酒で乾杯条例の類も百に及ぶ。それは、ひとつには「日本酒で乾杯推進会議」の活動があってのこと、といへよう。「日本酒で乾杯推進会議」の活動は十余年。私も、委員として参加してきた。そこでの活動主旨は、ただ日本酒を愛で飲まう、といふのではない。日本酒を通して日本文化のさまざまを見直し伝へていかう、とする。日本文化ルネッサンスを標榜してきた。さういふ経緯もあって、檀上での和やかな会話は、私にとってもうれしいことであった。

もうひとつ、うれしいことがあった。乾杯の後、三十分ほどして「めでた」の歌が出てきたことである。協会の若手二十人ばかりが壇上に上り、正座して「めでた」を合唱したのだ。その上手、下手もいふまい。若者たちが、大真面目に「めでた」を歌ふのである。会場でも追唱する人が少なくなかった。

その「めでた」は、お座敷の宴席で歌ってきた切歌だといふ。切歌といふのは、座の切換へを示す歌。それまでは粛々と飲んで、席を立たない。祭事でいふと、直会の席に相当する。いひかへれば、「礼講」の席。これが、歌をもって無礼講の席に切換はるのだ。たしかに、さうしたお座敷の慣習があった。たとへば、能登の輪島では「まだら」がその切歌であった。

下呂のその会でも、「めでた」が出るまでは、誰も席を立たず、隣同士で静かに酒を酌みかはしてゐた。そして、歌が終はると、徳利やビール瓶を手に誰彼ともなく席を立ち、にぎやかに卓を巡ることがはじまった。

思へば、私たちは「礼講」といふ言葉を忘れて久しい。しかし、考へれば、無礼講なる言葉が単独であるはずがないのだ。あくまでも礼講が先にあって、無礼講に切換はるのである。ならば、お座敷であれパーティーであれ、それを文化として意識しようではないか。

乾杯の挨拶の常套句は、「皆様の御健勝と御多幸を祈念して」。祈念するからには、そこに神仏や先祖を迎へてのことである。つまり、直会の伝統を繋いでのこと。ならば、その意識をもって杯をあげようではないか。

「礼講」を忘れた日本人でありたくない。と、あらためて思った下呂温泉でのひとときであった。

 


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