投稿日:2025年3月8日(土)
「獺祭」を製造する旭酒造株式会社が、グローバル市場へ踏み込むため、今年6月に「株式会社 獺祭」に社名変更するようです。私の地元の隣町・岩国市で生まれた獺祭。山口県発のブランドとして暴れてきて欲しい限りです・・・同じく岩国市の「五橋」が大好きな権禰宜の宇多です。
さて、神社界唯一の業界紙であります『神社新報』令和6年12月15日号掲載のコラム「神宮だより」をご紹介致します。
神宮の酒造り
「日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなり、今後日本の酒文化が世界から注目されることになるだらう。わが国における酒との関はりは神話の時代にまで遡り、『古事記』に須佐之男命が八岐大蛇に飲ませる酒を、足名椎神、手名椎神に命じて造らせたことが記されてをり、これが文献上のわが国最古の酒といへる。
神事にも酒は欠かせない存在であり、神宮の諸祭典では醴酒と清酒が供へられ、神嘗祭と六月・十二月の月次祭では白酒と黒酒も捧げられる。醴酒は一夜酒とも呼ばれ、短期間で醱酵させた粥状の酒を指し、清酒は御料酒を用ゐてゐる。白酒は今日でいふ濁酒であり、黒酒は白酒に灰を混ぜて着色したものである。
古くは醸造専門の職掌として清酒作物忌や酒作物忌といふ清浄無垢な童女が従事。現在も清酒を除く三種類は、古式に則り内宮域内の忌火屋殿で神職の手によって調進されてゐる。その際、麹を内宮の御酒殿に納め、御酒殿神に無事醸成できるやうに祈りを捧げてから、神宮神田で収穫された米を使用し、十日間ほど掛けて酒造りがおこなはれる。
造り終へると内宮と外宮の御酒殿に一旦奉納し、祭典前日に奉下して神々に捧げられる。現在十二月十五日から始まる月次祭に向けて酒造りの真只中である。
なほ醸造工程に関しては担当する神職しか知らない秘伝とされてをり、関係者以外は原則立ち入らない。神宮にとってお米から作られる神酒は、重要な神饌として丁寧に扱はれてきた。
わが国には古より米で酒を醸し、それを神々に供へて感謝し、また自らも飲んでお祝ひする文化がある。今後「伝統的酒造り」の登録が、技術だけではなく酒にまつはる文化や信仰を広く知っていただく機会になることを願ふ。(総務部・髙部友邦)」