投稿日:2025年3月6日(木)
少し寒い日が続き、みぞれや雪も見られましたが来週は日によって20度近い日もあるようです。季節の変わり目、体調を崩さないよう気を付けたいと思います……権禰宜の牧野です。
さて、先日行われた中堅神職研修の中で、皇學館大学特別教授である新田均先生の「麻」に関する御講義が大変興味深く、また神職である私も知らないことが多かったので少しご紹介させて頂きたいと思います。
大麻草は比較的栽培も容易で軽くて丈夫な繊維として世界中で広く利用されてきた植物です。日本でも服や紐の材料として戦前では一般的に使われていました。現在では麻薬の一種、マリファナのイメージがあり危険だと思われがちですが、実は麻薬に使われるものと繊維に使われるものでは同じ大麻草でも全く品種が違うのはご存知でしょうか?また、日本では実態を無視した規制と偏見により栽培農家が消滅寸前となり、神社であっても外国産が多く使われている現状があります。
※白旗神社で使用している精麻(せいま)
繊維として使われる製麻は、乾燥させた麻の茎の繊維を剥いで作られます。日本で伝統的に栽培されている品種にも麻薬成分は含まれますが、含まれる量が非常に少ないため燃やした時に出る煙を吸っても全く問題なく現実的に麻薬として利用することは不可能だそうです。
神社では「麻」は特別な祭典だけでなく日々の御奉仕にも欠かせない存在です。多くの神社でお祓いに使う大麻(おおぬさ)は現在では紙で作った紙垂(しで)を麻で棒心に括り付けて作られるのが一般的ですが、古くはその字の通り紙を使わず全て麻で作られていたという説があるそうです。白旗神社にも小さいものですが紙垂の部分が全て麻の大麻があります。また6月30日と年末に行われる大祓行事では、麻を細かく裂いて自身を清めます。こうしたお清めの意味もあり、神社では物を結ぶ際など様々な場面で麻が使われます。
そんな日本人にとっても神社にとっても重要な「麻」は、当時世界的に広がっていた麻薬汚染を恐れたGHQの占領政策により栽培農家が免許制で管理されるようになりました。当時は麻薬成分が特定されておらず、日本で栽培されている品種が安全なこともよくわかっていませんでした。これにより、「麻」=「犯罪」の偏見が広まり全国でごく一般的に栽培されていた麻は現在わずか30名以下の農家さんによってなんとか守られている状態です。さらに後継ぎがいない家も多く、このままでは日本の麻栽培は途絶えてしまうといいます。
世界では大麻草の麻薬成分が特定されたことにより、繊維やその他の資源として安全な大麻草の利用が広まっています。また、一部の病気の治療にも大麻が有効なことがわかっています。日本でもこうした流れを受けて昨年12月、また正にこの3月から法律が改正され、医療用途や研究利用の解禁、所持だけでなく麻薬利用自体を取り締まる法律の新設、また安全な品種については栽培管理や利用制限の緩和が行われました。
このブログをご覧頂いた皆様にも是非、「麻」に関する正しい情報を知って頂き日本の伝統である麻産業が末永く反映していくようご理解ご協力を頂きたいと思います。