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【神社新報コラム】杜に想ふ~一工夫~

投稿日:2020年9月10日(木)


昨日は重陽の節句でしたね。Facebookのタイムラインに菊酒の画像が続々と上がり、ハッと気付いた時には午後10時を回っていました…権禰宜の遠藤です。

さて、神社界唯一の業界紙である『神社新報』8月31日号掲載のコラム「杜に想ふ」を御紹介致します。

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杜に想う

【杜に想ふ~一工夫~】

「諺の「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、一時のトイレットペーパーやマスク、うがひ薬の品切れ騒動など、コロナ禍で予想だにしなかった売行きを見せた物がある反面、多くの品物の売行きが不調なのは明らかで、さまざまな社会経済活動に影響が出て、消費動向や先行きが読み難い昨今である。

先日、夏祭りの金魚すくひに使はれる金魚の出荷数が激減し、産地の養殖販売業者によれば「祭り関連の註文がほぼない」状態で、出荷数が九割以上減る見込みとの報道があった。春先、旧知の露天商の親父さんは「各地の春祭りやイベントが全滅」と嘆いてゐたが、その後の夏祭りは言ふに及ばず、これからの秋祭りも察するに余りある。

子供のころの秋祭りでの思ひ出は深い。地元では「ヤシ」と呼ばれた露天商。香具師、テキ屋、夜店など呼び方はさまざまだが、綿菓子、たこ焼き、りんご飴など、昔の衛生管理はいかがなものだったであらうか。緑や赤にスプレーされた「カラーひよこ」、「手乗りサイズ」が売り文句のウサギは普通に大きく成長した。ミドリガメにいたってはサルモネラ菌を保有するとのことから自然に放たれ、日本固有種の亀をイヂメて生態系に影響を及ぼす問題となって久しい。また大人向けの露店として、植木や爪、茶碗や皿なども廉価で売られてゐた。境内に広げられた茣蓙の上に積まれた瀬戸物は、露店の店先ではわからないが、帰宅して食卓に並べると少し歪みがあって、親父が皿の端を箸先で押すとカタカタと音が鳴り、家族で笑ったのも懐かしい思ひ出。

さて今年の故郷の祭礼は、その担ひ手である壮年団代表として、ある壮年が団長を務めてゐる。彼が幼いころ、祭礼行列の先頭を務める大人の猿田彦役の横に並び、言はば猿田彦の子役を務めてゐた時のことは鮮明に記憶してゐる。独得な所作も大人顔負け、軽妙洒脱にこなし、その出で立ちは、神社の氏子総代でもあった祖父手製の鳥兜を被り、祖母が手縫ひをした華やかな狩衣風の装束を纏ったもの。まさに祭り男の英才教育を受けてゐた。

数年前、彼に大役となる壮年団長となるのはいつかと訊くと、「東京オリンピック開催の年」と笑顔で答へが返ってきた。私も御祝儀を出させていただくことを楽しみにしてゐたのだが、今年はその秋祭りも神事のみで、渡御などの神賑行事は早々に中止が決定したとのこと。神社に残る明治以来の記録では大正五年にコレラが発生して祭礼日を一カ月延期したことが一度だけあることを彼に伝へると、地元では誰も知らないと驚かれた。

聞けば、来る祭礼当日には神具のすべてを御神前に立て並べ、中止の渡御に代へるとのこと。これも現下ででき得ることをと摸索した素晴らしい工夫の一つと思ふ。名人と言はれた彼の祖父が、伝統的な鳥兜作りにも、ある一工夫を加へたことをそっと私に教へてくれた時の穏やかな好々爺の微笑みを思ひ出した。」

 

 


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