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【神社新報記事】鎮守の森の過去・現在・未来~そこが知りたい社叢学 鎮守の森と地域再生・コミュニティ~

投稿日:2022年6月10日(金)


【暦で見る九星の運勢シリーズ】四緑木星:令和4年7月(各自の九星についてはブログ末尾の表をご参照ください)「吉方…南 活動運になり物事が良い流れとなるので大いに励んで。但しその場の思い付きで動くのではなく、良い目標を立てて、それに向かって。夏の暑さが厳しいから夏バテに気を付けて。」とのことです…権禰宜の遠藤です。

さて、神社界唯一の業界紙であります『神社新報』令和4年3月21日号掲載のコラム「鎮守の森の過去・現在・未来~そこが知りたい社叢学~」をご紹介致します。

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【鎮守の森の過去・現在・未来~そこが知りたい社叢学 鎮守の森と地域再生・コミュニティ~】

「一昨年初め、環境省に「次期生物多様性国家戦略研究会」が設置され、委員として参加する機会を得た。

「生物多様性」といふ言葉は一般的にはまだ十分に定着してゐない面があるが、実は新型コロナウイルス感染症のやうな「人獣共通感染症(=人間と動物に共通する感染症)」が近年増えてゐる背景には、森林の減少など生物多様性の乱れが背景にあることがさまざまな研究で明らかになりつつある。

つまり森林が減少し、そこでの生物多様性が損なはれることもに、ウイルスを保有する動物の密度が増加するなどし、結果として感染症が発生しやすくなってゐるのだ。

したがって生物多様性を保全していくことは、新型コロナウイルスのやうな感染症の頻発を防ぎ、人間の健康を守っていくにあたっても大きな意味をもつことになる。

かうした中で、最近私が思ふやうになったのは、この「生物多様性」とやは「八百万の神様」といふ表現との関はりである。

すなはち「八百万の神様」といふ言葉は、大きくいへば自然の中に無数の神様が存在してゐるといふ自然観だ。

しかも「鎮守の森」といふ言葉が文字通り示すやうに、それは私たち人間にとって大切な、ともに共生していくべき(あるいは「畏敬」すべき)存在であることが含意されてゐる。

だとすれば「生物多様性」が重要だといふ考へ方は、まさにかうした「八百万の神様」といふ自然観と繋がるのではないだらうか。

そして幸ひなことに、先ほどふれた環境省の研究会の報告書(昨年7月公表)においては、「鎮守の森」への言及がなされた。具体的には、『鎮守の森』といった表現に示されるような、我が国における人と自然の共生に関する伝統的な意識や自然観など、生物多様性の保全に関わる文化的、精神的な側面も考慮していくことが重要である」といふ文章が盛り込まれたのである。加へて、日本の各地域における社叢林の存在が、生物多様性の保全に大きく寄与してゐることも重要視された。

<現代的課題などと 鎮守の森結びつけ>

以上、生物多様性と鎮守の森の関連について述ベたが、かうした関心も踏まへながら、私自身は「鎮守の森コミュニティ・プロジェクト」といふ活動をささやかながら進めてをり、以下それについて御紹介させていただきたい。

近年、「コミュニティ」や「地域再生」といふテーマへの関心が昂ってゐるが、祭りやさまざまな年中行事からもわかるやうに、日本では地域コミユニティの明らかな中心として神社やお寺があった。私は最初に知ったときずいぶん驚いたのだが、全国に存在する神社・寺院の数はそれぞれ約八万にのぼる。あれほど多いと思はれるコンビニの数は約六万なので、これはたいへんな数であり、「鎮守の森」は自然信仰と一体となった地域コミュニティの拠点として貴重な意義をもってきたのだ。一方、先ほど生物多様性をめぐるテーマにふれたが、昨今、気候変動ないし地球温暖化の問題が大きく浮上する中で、脱炭素やカーボン・ニュートラルといふことが大きな課題になってきた。

さうした中で再生可能エネルギー(自然エネルギー)の重要性、とくにそれを地域において整備していくことが政府レベルでも最優先のテーマとなってゐる。かうした状況を踏まへ、私がここ十年ほど進めてきたのが「鎮守の森コミュニティ・プロジェクト」。これは「鎮守の森」を自然エネルギーの分散的整備や地域再生といった現代的な課題と結びつけ、発展させていかうといふ趣旨のものだ。

たとへば、神社の周辺などに小水力や太陽光発電など自然エネルギーの拠点を整備し、さらに周囲の場所を一体的にデザイン。保育や高齢者ケアなどの福祉的活動、環境学習や教育、そしてさまざまな世代が関はりコミュニケーションをおこなふ世代間交流等々の場所として、つまり新たな「コミュニティの中心」ないし拠点として多面的に活用する。希望をこめて言へば、これは自然エネルギーと地域コミュニティそして日本の伝統的な自然観が一体となった試みとして、世界に発信できるビジョンにもなりうるのではないか(写真は小水力発電のイメージ)。

<試行錯誤の取組み徐々に展開をみせ>

かうした私たちの試みはまだ試行錯誤の状況だが、最近進展のあった事例として、埼玉県秩父市における小水力発電に関する展開を紹介したい。すなはち、地元の有志の方々と私たちのグループの鎮守の森コミュニティ

推進協議会(代表理事・宮下佳廣氏)のメンバーが共同出資して「陽野ふるさと電力」といふ会社を設立して事業を進め、幸ひ昨年1月に50キロワット(約100世帯の電力を供給する規模)の小水力発電設備の導入に至った。

さらにかうした取組みに、近隣の自治体や住民の方々も関心を向けてくださるやうになり、次年度からはより大きな規模の小水力発電をおこなふ「武甲山未来電力」(仮称)を設立。その売電収入を活用して武甲山の環境整備をおこなふ方向での展開が現在進行中である。御存じのやうに武甲山は秩父神社の御神体であるが、灰岩の採掘がなされて山容が大きく損なはれてゐるなか、地元の高校生などからも「武甲山がかはいさうだ」といった声が示されてゐた。地域の人々が協力してエネルギーの地産地消に取り組み、それを通じて地域のシンボルあるいは心のよりどころである「鎮守の森」の保全をおとなふといふのはきはめて意義深いことと思はれる。

ちなみに、平成25年に神社本庁でおとなはれた神社振興対策教化研修会で講演をさせていただいた際に、参加者の方々に対して「これからの時代の地域コミュニティにおける神社の役割」に関するアンケート調査を実施した。この中での「自然エネルギーを貴神社において何らかの形で導入することについて御関心はあるでしょうか」といふ設問に対し、47%の方々が「かなり関心がある」と回答されてゐた。

<さまざまな活動を引き続き推進して>

以上述べた自然エネルギーのほか、鎮守の森コミュニティ・プロジェクトでは「鎮守の森セラピー」「鎮守の森ホスピス」など、鎮守の森と地域コミュニティに関する現代的課題を結びつけた活動をおこなってゐる(私が所長を務める「鎮守の森コミュニティ研究所」のウェブサイト<http://c-chinju.org/>参照)。

鎮守の森と地域再生・コミュニティをつなぐ新たな展開が求められてをり、かうした活動に御関心をもっていただいた方は気軽に声をかけていただければ幸ひである。」

 

R4厄年表


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