投稿日:2019年3月12日(火)
晴天の中、気持ちいい外の風にあたっていたらくしゃみが止まらなくなりました。花粉症にはつらい時期です…権禰宜の佐藤です。
本日は『まほろば』に掲載されました特集「杜のなかとりもち」をご紹介します。
「特集~杜のなかとりもち~」
町や村を歩くと、ひょっこり杜が現れる。神社だ。人々が祈り、憩う神社を護る神職のことを、神様と人との仲を取り持つ「なかとりもち」とも呼ぶ。そんななかとりもちは、人と人、過去と未来をも取り持っていく。
「神聖な場所につき…」参拝者に対して神社を説明する時に決まってお話しする一言。「神聖な」「厳粛に」最近この言葉が通じないことが多い。実際に拝殿に入り感じてもらうのが一番だと南沢氷川神社の宮司・栗原健人さんは言う。一般的にはお賽銭箱の前で拍手を打つことが参拝であるが、更に「神聖な場所」で手を合わせることは新鮮な経験なのだ。まずは神社で何かを感じてもらうこと。これが始めの一歩だと栗原宮司は思っている。
南沢氷川神社が鎮座する東久留米市は都内有数のベットタウンだが、「氏子」であることを自覚している人は極一部で、町内会等もない。市の中央部に鎮座しながら近くに通るバスも廃線となった。近隣住民がホームページで神社の存在を知り、参拝に来るという不思議がこの地域の現状であると語る。
当地はもともと古い習慣や伝統を重んじる地域だ。江戸時代から伝わる強度芸能「南沢獅子舞」も、かつては旧家の長男しか奉仕できなかったほどだ。
しかし神社の風景は明らかに変わり始めている。4年に1度、獅子舞が奉納される秋祭の日、昨年は、天井画やホームページをきっかけに神社とつながりを持ち始めた人々がたくさん訪れ、境内に溢れた。
「少しでも神社と地域が近くなってほしい」
その思いから、栗原宮司は地域のボランティア活動にも積極的に参加する。祖父、父共に兼業神職(地方公務員)の家に生まれ7、23年前、25歳で宮司を拝命したものの「自分はこの町のことを何も知らなかった」と当時を振り返る。代々お守りしてきたお社と地域の繋がりに思い悩む日々も多かったという。「自分も一市民として地域に溶け込もう。そこから神社を知ってもらおう」
禰宜である弟・孝典さんと共に見出した、これが栗原宮司の道だ。この町で生まれ育った人、新たに住まいとした人。様々な人が行き交う地域の中で、鎮守様を中心に、ふるさとの新たな表情が紡ぎ出されてゆくことを願う。
神社と人、歴史と未来、そして笑顔と笑顔。栗原兄弟は、誰よりも地域を愛おしむ「なかとりもち」だ。