投稿日:2021年10月17日(日)
朝がどんどんと肌寒くなり、上着を引っ張り出してきました…。冬の衣替えも近いですね。権禰宜の佐藤です。
さて本日は、伊勢神宮崇敬会発行の『みもすそ』100号(令和3年秋)より、特集「御師の継承」を御紹介致します。
【御師(おんし)の継承】
神宮と国民との懸け橋として活動した伊勢の御師が廃絶して百五十年。しかしその心は今日に継承されています。
「吾が児、この宝鏡を視まさむこと、吾を視るがごとくすべし。ともに床を同じくし殿を共にして斎鏡と為すべし」
八咫鏡をお祭りする神宮の起源は、遙か神話に遡ります。天照大御神がその子孫に宝鏡のお祭りを命じた神勅に遵い、御歴代の天皇は皇居内でそれをお祭り申し上げました。
「この神風の伊勢の国は、すなはち常世の浪の重浪帰する国なり。傍国のうまし国なり。この国に居らんとおもふ」
さらなる神勅により天照大御神は伊勢に永くお祭りされることとなり、天照大御神と御歴代天皇とがこの国を守り栄えさせるためのお祭りがここに受け継がれています。
[御師の誕生]
私幣禁断。天照大御神と天皇とが神勅に基づく祈りで繋がる神宮ですから、そこに他者の祈りが入り込むことはできませんでした。しかし、その尊い御神威を仰ぎたい国民の心情は止みがたく、それを受けて祈りを執り持ったのが伊勢の御師と呼ばれる神主たちでした。
御師の誕生は平安末期から鎌倉初期。その後、戦乱の世を掻い潜りながら活動を全国に展開。世の安定を得た江戸時代には全国の国民を神宮へと誘い、伊勢を日本一の信仰と観光の聖地として確立させました。
[御師が展開した主要な活動]
(1)神宮神徳の宣揚普及
伊勢から遠く離れた津々浦々にまで神宮の尊さを伝え信仰心を定着させていきました。
(2)国民の祈願に応じた祈祷
御師の自宅に祈祷所を設けて豪華な神楽を伴う祈祷を行い人々の願いを大御神に伝えました。
(3)御祓大麻の授与
祈祷(御祓)を凝らした神札(大麻)を頒ち全国の人々が日常身近に神宮の神徳を仰げるようにしました。
(4)伊勢暦の授与
農耕や漁業の必需品である精確な暦を頒ち人々の生活に安定と安心をもたらしました。
(5)伊勢産物の贈答
大御神が「うまし国」と認めた伊勢の風土の魅力を土産物として全国の人々へ伝えました。
(6)参宮者の宿泊接遇
全国からの参宮者を自宅に宿泊させて 旅の疲れを癒すとともに山海の美味珍味でもてなしました。
(7)参宮の案内
神宮を熟知した御師ならではの丁寧で適確な案内によって参拝の行程を充実したものとしました。
次回に続きます。